難聴Deafness
難聴の種類について
難聴は大きく分けると3種類に分けられます。
伝音性難聴
外耳や中耳の音を伝える部分の障害により起こる難聴です。治療を行うことにより改善できる可能性があります。
感音性難聴
内耳や内耳より奥の聞こえに関する神経の障害により起こる難聴です。
混合性難聴
伝音性難聴と感音性難聴の両方の障害による難聴です。
突発性難聴
- ある日突然、耳の聞こえが悪くなる病気です。
- 原因不明ですが、過労やストレス、ウイルス感染などが原因と考えられています。
症状
- 難聴にめまいや耳鳴りを伴うこともあります。
- 難聴が軽度の場合は、「音が二重に聞こえる」、「耳がつまった感じがする」、「自分の声が変に聞こえる」などの症状で受診されることもあります。
- 難聴の自覚がなく、耳鳴り、めまい、ふらつく感じ、などで受診されることもあります。
治療
- 治療は、ステロイドホルモンを中心に、ビタミン剤、循環改善剤などの投与を行います。
- 軽度難聴の場合は外来で治療を行い、中等度~高度難聴の場合は入院治療となります。
治療成績について
- 突発性難聴は発症後早期に治療を開始すると治療成績が良いことがわかっています。
できるだけ早期に治療を開始することが重要で、発症後遅くとも2週間以内、できれば1週間以内に治療を開始することが望ましく、1ヶ月をすぎると改善の見込みはほとんどなくなります。 - 難聴が高度の場合やめまいを伴う場合は治療効果が良くありません。
- 耳に違和感を感じる場合は、早期に耳鼻咽喉科を受診することが大切です。
急性低音障害型感音難聴
原因不明で、急性あるいは突発的に低音域に限局した感音難聴をきたす病気です。臨床的には、メニエール病と突発性難聴のちょうど中間に位置します。1990年頃にわが国で認められるようになった新しい病気です。
- ストレス、過労・疲労、体調不良などが誘因となります。
- 症状は、耳のつまった感じ、耳鳴り(ゴー・ボーなどの低い音)、難聴、聴覚過敏(周囲の音が不愉快に響く)などがあります。
- 治療は、循環改善薬、イソソルビド製剤、自律神経調整薬などを使い、難治例では、ステロイド、抗不安薬を使うこともあります。
- 一般的には軽快しやすいですが、再発を繰り返す難治例もあります。
- めまいを繰り返すようになって、メニエール病に移行することもあります。
- 聴覚症状の発作が1回の場合に、急性低音障害型感音難聴と診断し、難聴を反復した場合にメニエール病非定型例(蝸牛型)と診断します。難聴が反復する急性低音障害型感音難聴とメニエール病非定型例(蝸牛型)とは類似した疾患と考えられています。
- 2000年の厚生労働省の全国調査では、急性低音障害型感音難聴の約40%が再発してメニエール病非定型例(蝸牛型)に移行し、さらにその1/4がめまいも反復するメニエール病確実例に移行すると報告されています。
音響外傷
- 音響による聴力障害。
- 爆発、雷鳴などの非常に強大な音の瞬間的な暴露による場合や大音量の音楽などを比較的長い時間聴いた後に難聴が生じる場合(ディスコ難聴、ロック難聴)があります。
症状
- 音響暴露直後より、耳閉感、耳痛を感じ、これらが治まってから難聴、耳鳴りに気づくことが多くあります。
- 難聴の程度は、暴露された音の強さ、暴露時間、周波数などにより異なります。
治療
- 一般的には、突発性難聴に準じた治療を行います。
騒音性難聴
一挙に外傷を与えるほどの強大ではない騒音に、長年に渡り暴露されることにより、慢性進行性に発生する音響性の聴力障害。
特徴
- 難聴は、まずC5 dipという、4000Hz付近の周波数の聴力低下を認めます。
- その後次第に、高音域、中音域へと波及していきます。
- 騒音環境から離脱すればそれ以上難聴が進行しないことも特徴です。
対策
有効な治療法はないため、騒音環境の改善を行い、作業時には耳栓などの防音保護具を使用し、 定期的な聴力検査を行うことが重要です。
心因性(機能性)難聴
耳自体には病気はなく、「聞こえの神経は正常である」と考えられるのに、聴力検査で聞こえが悪い結果が出る場合に、心因性(機能性)難聴を疑います。
- 「心の影響」があると考えられています。学校での出来事、友人や先生との関係、クラブ活動、勉強、家庭環境など、「心の負担になっていること」が原因であることがあります。
- 確定診断のため、DPOAE・ABRなどの詳しい検査を行います。
聴覚情報処理障害
(APD:Auditory processing disorder)
「聴力は正常であるにもかかわらず、日常生活で言葉が聞き取りにくい」という症状を呈します。
その原因は、外耳・中耳・内耳にはなく、聴覚情報を処理する中枢神経システムの機能異常にあると考えられています。
脳での聴覚情報の処理がうまくいかないため、騒音下での聞き取り困難、耳のみの情報での指示理解に困難が生じ社会生活に支障をきたします。
特徴的な症状
- 聞き返しや聞き誤りが多い
- 雑音下での聞き取りが難しい
・雑音の中で言葉が聞き取れず、思考が停止する
・居酒屋での会話が難しい
・教室騒音が大きく、先生の声が聞き取れない - 耳のみでの指示・理解が難しい
・口頭で言われたことは忘れてしまったり、理解しにくい
・長い話になると注意して聞き続けるのが難しい
・注文を聞き取ることができない
・電話対応が難しい
・視覚情報に比べて聴覚情報の聴取や理解が困難である - 複数人との会話が困難
・複数の人との会議では、だれが話しているのかわからなくなる
背景要因
- 注意欠陥多動性障害(ADHD)
- 自閉症スペクトラム障害(ASD)
- 認知的なバランスの悪さ(不注意、記銘力の悪さ)
- 心理的な問題(転職や異動の時期、家族構成や家庭環境の変化、学校行事の時期、友人とのトラブル等)
検査
- 純音聴力検査
難聴の有無をはっきりさせることが重要です。わずかな聴力の低下でもAPDと同じような症状を示すことがあります。 - 語音聴力検査
「あ」「ぱ」などの言葉を聞いて、何個正解したかを%で表す検査です。
言葉を聞き取る力がどれくらいあるのかを検査します。APDでは、語音聴力検査は正常のことが多いです。
対策
有効な治療法がないため、周囲の協力を得ながら環境調整を行うことが重要です。
環境調整
- 周囲の雑音を低減して、聞き取りの環境を良好にする
- 座席や配置を配慮する
- 補聴援助機器の活用
コミューン(ユニバーサルサウンド社)など - 話し手側の配慮
面と向かってはっきり話す。繰り返し話す。文字や映像など視覚情報を併用する。
聴覚トレーニング
- 聞き取りにかかわる注意力や記憶力を高めることで聞き取り能力を向上させる。
心理的支援
- 聞き取り困難の症状により、社会生活に支障をきたしている方がほとんどで、心理的な負荷を抱えている方も多く、必要に応じ、カウンセリングなど専門的な支援が必要になる場合があります。