地下鉄姪浜駅より徒歩4分の耳鼻咽喉科・アレルギー科

矢野耳鼻咽喉科

外耳・中耳の病気

外耳・耳介の病気Outer ear and pinna

  • 当院では、外耳疾患の診察・処置は、より確実に詳細に行うため、原則、顕微鏡下にて行います。
  • 耳内の診察・処置の状況は、大型モニターにてリアルタイムに観察可能です。
【画像】外耳・耳介の病気

耳垢塞栓(耳あか)

耳垢とは?

  • 外耳道皮膚の落屑に、外耳道に分布する耳垢腺や汗腺、皮脂腺などの分泌物と塵埃が混じったものです。
  • 乾いた乾性耳垢とアメ状の湿性耳垢に分けられます。この性状は、主に耳垢腺によって遺伝的に決められ、生涯不変の体質です。
  • 健康な外耳道皮膚には、耳垢を外耳道入り口に向かって運び出す自浄作用がありますが、この自浄作用が阻害されると、耳垢が外耳道内に充満する耳垢塞栓となります。

症状

  • 難聴、耳閉感
  • 耳痛(周囲組織が炎症をおこし外耳道炎を発症した場合)

治療

  • 顕微鏡下に耳用鉗子、吸引等を用いて耳垢を摘出します。
  • 耳垢が硬く摘出困難な例では、耳垢水等の耳垢に浸透する溶液を点耳して、耳垢を十分に軟らかくしてから除去します。

外耳道炎・外耳道湿疹・外耳道真菌症

掻痒感のために頻繁に耳掃除を繰り返すと、皮膚の角質層が障害されて防御機構が破綻し、炎症が増悪して掻痒感・炎症は増悪する、という悪循環に陥ります。

細菌感染が起こると、膿性の耳漏、耳痛が出現し、外耳道炎に移行します。

耳せつ

外耳道に限局した化膿性病変(おでき)。耳に触れると強い痛みを認め、外耳道が狭くなり、耳閉感や難聴を認めます。

外耳道真菌症(カビ)

外耳道皮膚への真菌(カビ)の感染。

  • 誘因
    過度の耳かきの習慣。耳漏の持続。補聴器の長期使用。長期間の点耳薬、ステロイド軟膏の使用等
  • 症状
    耳のかゆみ。灼熱感。耳漏。耳閉感。難聴。

治療

  • 洗浄や丁寧な清拭等、適切な局所治療が必要です。
  • ステロイドや感受性のある抗菌薬の入った軟膏・点耳薬等を使用します。
  • 真菌の場合は、抗真菌薬を用います。

外耳道真珠腫

外耳道に皮膚からの老廃物(角化物)が堆積して、外耳道の炎症と骨破壊を引き起こす病気です。
進行すると、難聴、開口障害、顔面神経麻痺などがおこります。病変の進展範囲はCTで評価します。
大部分の症例は、外来における保存的治療にてコントロール可能です。病変が進行して重症化すると手術が必要となります。

先天性耳瘻孔

耳の横に生まれつき穴が開いている一種の奇形です。感染がなければ放置してかまいません。感染すると、膿がでたり、皮膚が赤く腫れます。抗生剤投与や切開排膿にて様子を見ますが、繰り返すことがあれば手術が必要になります。

中耳の病気Middle ear

  • 当院では、中耳疾患の診察・処置は、より確実に詳細に行うため、原則、顕微鏡下にて行います。
  • 耳内の診察・処置の状況は、大型モニターにてリアルタイムに観察可能です。

中耳の病気には

  • 急性中耳炎
  • 滲出性中耳炎
  • 慢性中耳炎
  • 真珠腫性中耳炎
  • 耳管開放症
  • 耳硬化症

などが挙げられます。

【画像】中耳の病気

急性中耳炎

ほとんどが、鼻の奥の細菌やウイルスが耳管(耳と鼻をつなぐ管)を通って中耳に感染をおこします。
鼻の治療が非常に重要になります。発熱、耳痛、ひどくなると鼓膜が破れて耳だれ(耳漏)がでます。鼓膜の状態、リスクファクター(年齢・集団保育の状況・経過)などを考慮して治療方針を決定します。
抗生剤での治療が無効の場合、反復例・重症例は、鼓膜切開、鼓膜チュービングなどを検討します。

小児急性中耳炎難治化・反復の危険因子(リスクファクター)について

2歳以下の集団保育児は、中耳炎がなかなか治らず、何度も繰り返すことがあります。

  1. 低年齢
    ・免疫能の未熟な状態(生後6か月から2歳まで)
    ・耳管(耳と鼻をつなぐ管)の解剖学的特徴(幼児は耳管が太く短く水平に近いため、鼻咽腔から細菌が中耳に移行しやすい)
  2. 集団保育
    ・ウイルス感染、上気道炎などが伝搬しやすい環境
    ・兄姉が集団保育を受けている場合も同様
  3. 薬剤耐性菌
    ・抗生剤の効きにくい菌の蔓延

特に1歳前後の保育園児の中耳炎は難治化・反復しやすく注意が必要です。

小児急性中耳炎の治療方針

小児急性中耳炎ガイドラインに基づき治療方針を決定します。

  1. 年齢、症状、鼓膜所見により、抗生剤の選択、治療方針の決定を行う。
    ・2歳未満の低年齢児は、細菌性中耳炎のハイリスク児となります。
    ・特に鼓膜所見が重要で、ガイドラインでも高いスコアが割り当ててあります。
    ・鼓膜所見が軽度の場合は、抗生剤投与を行わずに経過をみることもあります。鼓膜の膨隆がひどい場合は、鼓膜切開を初回診察時に行うこともあります。
  2. 適正な抗菌薬を使用する。
    ・初診時に、細菌培養検査を行い、原因菌に応じた抗菌薬を選択します。
    ・抗生剤投与後3~5日後に改善がない場合は、細菌培養検査・薬剤感受性検査の結果を考慮して抗生剤の変更を行います。
  3. 抗菌薬は、適切な量と期間投与が重要。
    十分量の抗生剤適切な期間投与しない場合、殺菌が不十分となり、薬剤耐性菌を生みだし、中耳炎の難治化・反復の原因となる可能性があります。

滲出性中耳炎

中耳の気圧調整がうまくいかないと、耳が詰まったり自分の声が響く感じがしたり、中耳に水がたまり(浸出液)聞こえが悪くなります。痛みや発熱がないため、乳幼児の場合は、呼んでも返事をしない、声が大きい、耳をよく触る、等の症状で発見されることもしばしばあります。治療に抵抗する場合は、鼓膜切開、レーザーによる鼓膜開窓、鼓膜チューブ留置術を行います。

鼓膜切開術・レーザーによる鼓膜開窓術・鼓膜チューブ留置術

当院では、 急性中耳炎(重症例)・反復性(難治性)中耳炎・滲出性中耳炎に対し、症例ごとに十分検討して、最善の方法を選択・施行します。


鼓膜切開刀による鼓膜切開

通常の鼓膜切開法で、切開孔が数日で閉鎖し、再発することがしばしばあります。

【画像】鼓膜切開術・レーザーによる鼓膜開窓術・鼓膜チューブ留置術

レーザーによる鼓膜開窓

  • レーザーを使用して、鼓膜に円形の小さな穴を一瞬にして作成することができます。
  • 切開孔のサイズは自由に設定可能で、中耳炎の状態により決定します。
  • 1〜3週間切開孔が維持でき、治癒率が高くなります。

鼓膜チューブ留置術(短期用チューブ・長期用チューブ)

  • 非常に良い治療法ですが、鼓膜に穿孔が残ることがあります。
  • 中耳粘膜の改善を目的に、短期用チューブで1~3ヶ月程度、長期用チューブで1~2年程度、チューブ留置を行います。
【画像】鼓膜チューブ留置術(短期用チューブ・長期用チューブ)

慢性中耳炎

鼓膜に穴が開いて、耳だれが持続する状態です。まず、抗生剤を投与して消炎を行い、手術を検討します。

鼓膜穿孔閉鎖術

従来の手術法では、耳後部皮膚を切開して、皮下組織を採取し、組織接着剤を使用して鼓膜穿孔部に貼り付けます。
この方法は、皮膚切開も組織接着剤も不要で、鼓膜用レーザーと人工皮膚材を用いて短時間に行える、低侵襲の方法です。

手術の流れ

  1. 麻酔液を浸した綿球を穿孔周囲の鼓膜面に10分程度置きます。
  2. 鼓膜用レーザーにて、鼓膜穿孔縁を処理(新鮮化)します。
  3. 人工皮膚材で穿孔部を塞いで終了です。

適応は?

外傷性鼓膜穿孔、慢性穿孔性中耳炎、鼓膜換気チューブ脱落後の鼓膜穿孔残存など。

  • 慢性中耳炎では、耳漏が少なくとも3ヶ月は見られないことが必要です。
  • 鼓膜の石灰化が強い例や鼓膜穿孔の位置・大きさによっては、手術が困難なことがあります。
  • 鼓膜が菲薄化している症例では、かえって穿孔が拡大することもあります。
  • パッチテストで聴力の改善がない場合は、鼓室形成術を考慮します。

真珠腫性中耳炎

  • 角化扁平上皮が中耳に入り、炎症を伴いながら周囲の骨を破壊していく病気です。
  • 癒着性中耳炎の鼓膜癒着部や慢性中耳炎の鼓膜穿孔部から上皮が侵入して、真珠腫へと移行することもあります。

症状

  • 耳小骨が破壊されると難聴をおこし、感染を合併すると耳漏を生じます。
  • 骨破壊が進むと、内耳障害により、感音難聴、めまい、耳鳴りが起こります。
  • 顔面神経へ炎症が波及すると、顔面神経麻痺を起こします。

治療

  • 手術が基本的治療となります。

耳管開放症

耳管(耳と鼻をつなぐ管)が、やせて通り過ぎる状態です。

  • 自分の声が響く
  • 自分の呼吸が聞こえる
  • 耳がつまる

等の症状があります。
臥位・前屈位へ体位を変化させると症状が軽快し、呼吸により鼓膜が動揺する所見を認めます。
病気やダイエットなどで急に体重が減少した場合や、薬剤が原因となる場合などがあります。対処法としては、症状発症時の頸部圧迫、頭位を低く保つ、水分補給です。治療では漢方薬や生理食塩水の点鼻、鼓膜にテープを貼って鼓膜の動きを制限する方法が有効になることがありますが、難治例は手術(耳管ピン挿入術)を行うこともあります。

耳管開放症と鼻すすり癖について

耳管開放症の方は、不快な耳症状を改善するために鼻すすりを頻繁に行います。鼻すすりにより、耳管を閉塞すると耳管開放症状が消失し快適な状態になります。
しかし、閉塞が解除されるとまた開放症状が出現し、鼻すすりをします。耳管の閉塞は長く続き、嚥下などでも解除されないことがあります(耳管のロック現象)。中耳腔の陰圧状態が繰り返されると、この状態に慣れてしまい、ロックが解除されると周囲の音が響いて不快に感じ(聴覚過敏)、すぐに鼻すすりをして快適な陰圧状態に戻してしまいます。
このような状態が習慣になると、鼓膜の内陥が生じ、真珠腫性中耳炎、癒着性中耳炎の原因となります。

耳硬化症

鼓膜の奥には耳小骨という小さな骨が3つあり、その一番奥のあぶみ骨という骨が次第に硬くなり動きが悪くなることで聞こえが悪くなる病気です。鼓膜に異常がない伝音難聴では、耳硬化症を疑う必要があります。

特徴

  • 病変は、耳小骨と内耳に限られ、鼓膜所見は正常です。
  • 20~40歳で発症することが多く、女性にやや多い傾向があります。
  • 突発性難聴と異なり、難聴は緩徐に進行します。
  • 妊娠・出産後に症状が増悪することがあります。

検査

  • 聴力検査:
    伝音性難聴や混合性難聴を認めます
  • 側頭骨CT検査:
    アブミ骨周辺の骨病変等を評価します。

治療

  • アブミ骨手術:
    手術により、聴力の改善が期待できる疾患です。

その他Other

顔面神経麻痺

顔の動きが悪くなったり、口から水がこぼれたり、閉眼が充分にできなくなったりします。顔面神経は脳を出た後耳鼻科領域を通るため、耳鼻科で検査・治療を行います。
主に2つの症例が挙げられます。

  • ベル麻痺(原因不明の末梢性顔面神経麻痺)
  • ハント症候群(水痘帯状疱疹ウイルスが原因。耳痛、発疹、めまい、難聴などを伴う)

早急に、ステロイド、抗ウイルス薬による治療を開始します。
また、重度の麻痺では入院治療が必要です。