地下鉄姪浜駅より徒歩4分の耳鼻咽喉科・アレルギー科

矢野耳鼻咽喉科

めまいについて

めまいInner ear

メニエール病

  • 難聴、耳鳴り、耳閉感などの聴覚症状を伴い、めまい発作を繰り返すことを特徴とする内耳性の疾患です。
  • 内リンパ水腫(内耳のリンパ液の浮腫)が原因と考えられています。
  • 発作時は、内リンパ水腫が起こることにより、内耳感覚細胞が障害を受け症状が発症します。
【画像】内耳

症状

  • めまいは必ずしも回転性めまい(ぐるぐる回る)とは限らず、ふわふわする感じ、揺れる感じ、体が傾く感じなど様々です。
  • めまい発作の持続時間は、10分程度から数時間。(良性発作性頭位めまい症は数秒から十数秒程度)。
  • 難聴、耳鳴り、耳閉感などの聴覚症状は、めまいの発作前またはめまいと同時に出現・増悪し、めまいの軽減とともに軽快することが多いです。

検査

聴力検査 重心動揺検査

メニエール病の特徴

  • 職業分布では、専門技術職に多い。
  • 30~50歳代の働き盛りに多い。
  • 性格的に几帳面、神経質、完璧主義が多い。
  • 発症時間帯は、早朝から夕方が多く、夜間は少ない。
  • 発症誘因として、ストレス、過労、睡眠不足が多い。
  • 発作の回数に、家庭や職場環境、ストレスの影響が強い。
  • 気象との関係:標高の高いところ、台風、梅雨、寒冷前線通過時など低気圧の影響で増悪しやすい。

治療

メニエール病の本態は、内リンパ水腫といわれています。発作時は、内リンパ水腫が起こることにより、内耳感覚細胞が障害を受け症状が発症します。
症状・病期により以下のような 薬物を選択して使用します。

  1. めまい急性期の治療
    ・抗めまい薬(メリスロン、セファドールなど)
    ・抗ヒスタミン薬(トラベルミンなど)
    ・抗不安薬
  2. 内耳機能保護・回復・維持
    ・ビタミンB12製剤(メチコバール)
    ・ATP製剤(アデホスコーワ顆粒など)
    ・脳循環・代謝改善薬(ケタス、セロクラールなど)
    ・循環改善薬(カルナクリンなど)
    ・ステロイド薬(プレドニン、リンデロンなど)
  3. 内リンパ水腫の軽減、再形成防止
    ・浸透圧利尿薬(イソソルビド)
    ・漢方薬(苓桂朮甘湯、五苓散、半夏白朮麻湯、柴苓湯など)

メニエール病の臨床経過

  • メニエール病には、発作期と休止期があります。
  • 発作期は、激しいめまい、耳鳴り、難聴、耳閉感が起こります。
  • 休止期は、症状がすべて消失している場合もあれば、耳鳴り、難聴、耳閉感が残っている場合もあります。
  • 一般的には、発症初期は、めまい発作の間隔も比較的長く、難聴も回復することが多いです。
  • 1~2年から数年経過してくると、めまい症状が頻発するようになり、難聴も回復しなくなり、次第に悪化することがあります。
  • 罹病期間が長期化するとともに、難聴は低音域のみならず、中・高音域に及び不可逆化・高度化する傾向があります。
  • 経過中に、初期には一側性であった難聴が両側性へと移行する例があります。両側化の頻度は、10~30%で、長期化とともに増加し、一側性と比べ難聴は高度化しやすくめまいの改善率も低いと言われています。
  • メニエール病は、高頻度で良性発作性頭位めまい症(BPPV)が合併することが報告されています。

日常での注意点・予防

ストレスの軽減、過労防止につとめ、十分な睡眠をとり、適度な運動を行うことが重要です。

脱水を起こさないようにコントロールすることが必要で、腎機能、心機能が正常であれば、女性では1日に1.5~2L、男性では2~2.5Lの水分摂取が望ましいとされています。

生活改善・ストレスの影響緩和のために
  1. 早めの帰宅と夕食、早めの入眠と早起き、規則正しい生活習慣づけ
  2. 仕事、家事、周囲の評価に対する発想の転換
    頑張りすぎない、完全であることにこだわらない、失敗を恐れない、他人の評価を気にしない、など
  3. 悩みの相談をためらわない、相談事と関係なくとも人とおしゃべりする
  4. 娯楽、趣味を持つ
    旅行、ゴルフ、会食(家族、友人との宴席、など)、歌唱(カラオケ、合唱への参加、詩吟、など)
  5. 日常における適当な運動
    ウォーキング、水泳、ヨガ、ダンス、など
    エアロビクスなどの有酸素運動(メニエール病発作予防、聴力改善の報告)
メニエール病診断基準 日本めまい平衡医学会(2017年)

A. 症状

  1. めまい発作を反復する。めまいは誘因なく発症し、持続時間は10分程度から数時間程度。
  2. めまい発作に伴って難聴、耳鳴、耳閉感などの聴覚症状が変動する。
  3. 第Ⅷ脳神経以外の神経症状がない。

B. 検査所見

  1. 純音聴力検査において感音難聴を認め、初期にはめまい発作に関連して聴力レベルの変動を認める。
  2. 平衡機能検査においてめまい発作に関連して水平性または水平回旋混合性眼振や体平衡障害などの内耳前庭障害の所見を認める。
  3. 神経学的検査においてめまいに関連する第Ⅷ脳神経以外の障害を認めない。
  4. メニエール病と類似した難聴を伴うめまいを呈する内耳・後迷路性疾患、小脳、脳幹を中心とした中枢性疾患など、原因既知の疾患を除外できる。
  5. 聴覚症状のある耳に造影 MRI で内リンパ水腫を認める。

診断

メニエール病確定診断例(Certain Meniere’s disease)
A.症状の3項目を満たし、B.検査所見の5項目を満たしたもの。

メニエール病確実例(Definite Meniere’s disease)
A.症状の3項目を満たし、B.検査所見の1~4の項目を満たしたもの。

メニエール病疑い例(Probable Meniere’s disease)
A.症状の3項目を満たしたもの。

良性発作性頭位めまい症(BPPV)

末梢性めまいの中で、最も頻度の高い疾患です。

内耳の小さな石(耳石)が半規管に入り込んで浮遊することによって、めまいがおこります。
頭を動かしたときに内耳が刺激されめまいが起こります。

【画像】半規管

症状の特徴

  • 特定の頭位変換上下、左右、寝返りを打つなどによって、めまい症状がおこる。
  • めまいの持続時間は、数秒から1分以内。(メニエール病は10分から数時間)
  • 繰り返して、同じ頭位変換を行うと、めまいは軽減するか、おこらなくなる。
  • めまいに、難聴、耳鳴り、耳閉感などの聴覚症状は随伴しない。(メニエール病は随伴あり)

診断

  • 頭位・頭位変換眼振検査にて、出現する眼振の性状とめまいの有無を検査します。
  • 病巣半規管により、後半規管型、外側半規管型、前半規管型に分類。
  • 耳石の存在部位により、半規管結石症、クプラ結石症に分類されます。

治療

  • 耳石置換法を行います。
  • 後半規管型半規管結石症→Epley法など。
  • 外側半規管型半規管結石症→Lempert法など。
  • 多くは数週間以内に改善します。

PPPD:持続性知覚性姿勢誘発めまい:Persistent Postural-Perceptual Dizziness

  • 急なめまいを発症した後、急性期症状は改善したにもかかわらず、雲の上を歩いているような状態が、3ヶ月以上にわたってほぼ毎日みられる疾患です。
  • 近年、慢性めまいの多くを占める疾患と考えられています。
  • 2017年にBarany societyにて診断基準が策定されました。

症状

  • 浮動感、不安定感、非回転性めまいのうち一つ以上が、3ヶ月以上にわたってほとんど毎日存在
  • 3つの症状増悪因子があります。
  1. 立位姿勢・歩行(立ったり、歩いたりすること)
  2. 能動的あるいは受動的な運動(体を動かしたり、動かされたりすること。エスカレーター、電車、バスへの乗車など)
  3. 動くものや複雑な視覚パターンなどの視覚刺激。(陳列棚、細かい書字、映画、スクロール画面等)

診断

  • 現時点では、特徴的な検査所見がないため、症状や病歴を詳細に聴取することで診断に導きます。
  • スクリーニングのため、NPQ(Niigata PPPD Questionnaire)による問診を行います。
PPPD 診断のための問診票
(Niigata PPPD Questionnaire、NPQ)

あなたのめまい症状は、次のようなことで悪化しますか
(0~6 点、7段階評価、72点満点。0点:何も感じない 6点:耐えられない)

Q1. 急に立ち上がる、急に振り向くなど、急な動作をする。
Q2. スーパーやホームセンターなどの陳列棚を見る。
Q3. 普段通りに、自分のペースで歩く。
Q4. TV や映画などで、激しい動きのある画像をみる。
Q5. 車、バス、電車などの乗り物に乗る。
Q6. 丸いすなど、背もたれやひじ掛けのない椅子に座った状態を保つ。
Q7. 何も支えなく、立ったままの状態を保つ。
Q8. パソコンやスマートフォンのスクロール画面を見る。
Q9. 家事など、軽い運動や体を動かす作業をする。
Q10. 本や新聞などの細かい文字をみる。
Q11. 比較的早い速度で、大股で歩く。
Q12. エレベーターやエスカレーターに乗る

立位(=3+6+7+11)    点


体動(=1+5+9+12)    点


視覚(=2+4+8+10)    点

仮説

  • 体平衡は、前庭覚(内耳)、視覚、体性感覚により維持されており、いずれかの感覚が障害を受けるとほかの感覚系への依存が強くなります。
  • 急性前庭疾患に罹患すると、障害を受けた前庭機能を補うために、平衡維持のバランスが視覚依存または体性感覚依存へシフトします。
  • 通常は、前庭機能の回復につれて、視覚依存、体性感覚依存が解消し元のバランスへ戻ります。
  • PPPDでは、原疾患が治癒した後もそのバランスが視覚依存または感覚依存のまま(=過剰適応)であるために、視覚刺激や体動に過剰に反応しめまいを発症すると考えられています。

治療

  • 過度な視覚依存、体性感覚依存の解消が有効な治療法と考えられますが、決定的な治療法は開発されていません。
  • 現時点では、抗うつ薬(SSRI/SNRI)、前庭リハビリテ-ション、認知行動療法が三大治療とされています。

前庭神経炎

激しいめまいを生じる病気で、ウイルス感染が原因と考えられています。入院治療が必要となることが多いです。

めまいの検査Checkup

当院では、最新の機器を使用し、正確なめまい診断をめざしています。

主な検査方法

  1. 聴力検査
    【画像】聴力検査

    当院の聴力検査室は、二重防音扉の完全防音設計で、高度の遮音性能をもち、正確な聴力検査が可能です。メニエール病、低音障害型難聴、めまいを伴う突発性難聴、聴神経腫瘍、真珠腫性中耳炎、などの診断に重要です。

  2. 眼振検査
    【画像】赤外線眼振画像TV装置

    頭位表示装置を備えた赤外線画像検査装置を使用し、眼振の詳しい分析評価が可能です。

  3. 重心動揺検査
    体のふらつきをコンピュータで解析し評価します。
    【画像】重心動揺計

    体のふらつき・バランスの状態をコンピュータで解析し、めまいや平衡障害の評価を行います。

めまいを起こす病気について・めまいが起こらないように