くびのしこり・腫れNeck lump / swelling
原因
口腔・咽頭・喉頭、甲状腺、顎下腺・耳下腺などの唾液腺、リンパ節などいろいろな部位の病変が原因となります。
まず触診を行い、さらに、エコー検査・血液検査などで病変を詳しく評価します。
咽頭がん・喉頭がんなど、のどの悪性腫瘍のリンパ節転移などを疑う場合は、のどのファイバー検査(内視鏡検査)も必要となります。
悪性疾患の除外を確実に行うことが重要となります。
エコー
くびのしこり・腫れなど、頭頚部領域(甲状腺、耳下腺、顎下腺、リンパ節、筋肉、血管など)の詳細な観察を行います。
甲状腺の病気
検査
- エコー検査により、内部の性状(大きさ、形状、境界、石灰化など)を詳しく観察し評価を行います。
- 血液検査(freeT4・TSH・甲状腺自己抗体など)
甲状腺疾患
甲状腺疾患には以下のような疾患があります。
- 甲状腺良性腫瘍 腺腫・腺腫様甲状腺腫(adenomatousgoiter)・のう胞など
- 甲状腺悪性腫瘍 乳頭がん・濾胞がん・未分化がん・悪性リンパ腫など
- 橋本病(甲状腺機能低下症)
- バセドウ病(甲状腺機能亢進症)
- 亜急性甲状腺炎・無痛性甲状腺炎
亜急性甲状腺炎
- 甲状腺に炎症が発生し、甲状腺組織の破壊が生じ、一過性に甲状腺ホルモン値が高値となる病気です。
- 原因は、はっきりとしたことはわかっていませんが、かぜ症状に続いて起こることが多く、ウイルス感染との関連が示唆されています。
- 30~50歳代の女性に多く発症します。
- 甲状腺の痛み
嚥下時や触った時のみに軽度の痛みを感じる程度のものから、何もしなくても強い痛みを感じるものまで様々です。 - 甲状腺の腫れ
腫れの部位が、左から右など、時間とともに移動することが特徴です。 - 発熱
発熱のないものから、微熱、高熱まで様々です。 - 甲状腺ホルモンによる症状
甲状腺組織が壊れ、甲状腺内に蓄えられていた甲状腺ホルモンが血中に漏出するため、一時的に、動悸、息切れ、発汗などの症状がでます。 - 血液検査
症状
検査
1. CRPなどの炎症反応が上昇します
2. 血液中の甲状腺ホルモン値やサイログロブリン値が高くなります。
- 超音波検査
甲状腺の腫れや炎症所見を認めます。 - 自然に軽快する病気で、症状や炎症所見が軽度であれば、無治療で経過をみることもあります。
- 発熱や痛みが強いときは、消炎鎮痛剤やステロイドを使用することもあります。
- ほとんどが、2~3か月で症状消失し、甲状腺ホルモン値も正常化します。
- 最終的に甲状腺機能低下症に移行し、甲状腺ホルモン内服が必要となる場合があります。
治療
予後
耳下腺・顎下腺の病気
唾石症
唾液の排出路に石(唾石)が溜まるもので、食事時に痛んだり腫れたりします。繰り返すもの、石が大きいものは手術が必要です。エコー、CTでの検査を行います。
反復性耳下腺炎
耳下腺の腫脹を繰り返す病気です。
ムンプス(おたふくかぜ)
最近成人での罹患例が増加しています。血液検査でムンプスウイルスの抗体検査などを行います。
リンパ節の病気
多いのは、咽頭炎・扁桃腺炎によるリンパ節炎です。
中には、菊池病(亜急性壊死性リンパ節炎)、伝染性単核球症(EBウイルスによる)などの特殊炎症、咽頭がんなど悪性腫瘍のリンパ節転移、悪性リンパ腫(血液のがん)などが原因となっている場合もあります。
悪性疾患の除外が重要となります。
急性化膿性リンパ節炎
- 咽頭炎・扁桃炎などの上気道炎、口内炎・歯肉炎などの口腔内の炎症、頭頚部の皮膚感染症などに伴い、頚部のリンパ節が反応性に腫脹したものです。
- 細菌性のものであれば抗生剤が有効です。
亜急性壊死性リンパ節炎(菊池病)
- 圧痛を伴う原因不明の頚部リンパ節腫脹をきたす疾患です。
- 10~30歳台の女性に多く、発熱を伴って発症することが多いです。
- 血液検査では、白血球の低下が特徴的です。
- 診断は最終的にはリンパ節生検による組織診となります。
- 1〜3か月の経過で自然軽快する症例が多いのですが、再発をきたす場合もあります。
- 抗生物質は無効で、対症療法が中心となります。
- 症状が強い場合や再発をきたす症例には、ステロイドの投与を行うこともあります。
伝染性単核球症
- EBウイルス(Epstein-Barr virus)によって生じる疾患で、頚部リンパ節腫脹、発熱、咽頭炎、扁桃炎などをきたし、特に肝機能障害をきたすのが特徴です。
- EBウイルスの初感染の場合に発症します。(成人の9割は、抗体あり)
- 10~20歳台の若年者に多い。
- 血液検査にて、異形リンパ球の上昇、LDHの上昇、EBウイルスの抗体価上昇などを認めます。
- 治療は対症療法が中心となります。(ペニシリン系の抗生剤はアレルギー反応を起こすため禁忌となっています)
結核性リンパ節炎
- 結核は、本邦では多い疾患であり、常に念頭に置くべき疾患とされています。
- 肺結核以外の結核症では、結核性胸膜炎に次いで多く、結核性リンパ節炎は約60%が頚部に発症します。
- 腫脹は痛みがなく、周囲と癒着する傾向があります
- かたい球形の腫瘤を形成し、大きくなるとリンパ節同士が互いに癒合します。
悪性リンパ腫
- 悪性の頸部腫瘤の代表的疾患です。
- リンパ組織にあるリンパ球や他の組織に散在性に分布しているリンパ球が増殖して腫瘤をきたした悪性腫瘍です。
頸部リンパ節転移
- 悪性腫瘍の細胞が、頸部のリンパ節に転移した状態です。
- 喉頭がん・咽頭がんなどの頭頸部に発生する悪性腫瘍は、頚部リンパ節に転移しやすい傾向があります。
- 胃、肺、子宮などの頭頸部領域以外の臓器から転移することもあります。