■鼻の病気
アレルギー性鼻炎
くしゃみ、鼻水、鼻づまりが 3 大症状です。
診断
- 鼻汁好酸球検査:鼻の中に含まれる好酸球を調べます。
- アレルギー抗体検査:アレルギーの原因(特異的 IgE)を血液検査で調べます。
- ファイバー検査(鼻腔ポリープ・腫瘍疑い)、レントゲン検査(副鼻腔炎疑い)を行うこともあります。
治療
原因抗原の徹底的除去・回避をおこない、内服薬や点鼻薬での治療をまず行います。薬が効かない難治・重症例やご本人の希望により、レーザー治療(下甲介粘膜焼灼術)、舌下免疫療法(ダニ・スギ)などを検討します。
下鼻甲介粘膜レーザー焼灼術(鼻粘膜レーザー治療)
■このような方にお勧めしています
- アレルギー性鼻炎、花粉症、肥厚性鼻炎などが適応となります。
- 薬が効きにくい方、薬が合わない方、薬を減らしたい方、鼻づまりが強い方、妊娠を考えている方、などにお勧めしています。
■どんな治療?
- 下甲介粘膜にレーザーを照射することにより、粘膜下の組織を減量させる治療法です。
- 症状(鼻づまり・鼻漏・くしゃみ)の改善、薬の減量を目的に行います。
- 治療後、数日から 1 週間は一時的に鼻炎症状が悪化しますが、その後、過敏性の減った新しい粘膜が再生してきます。
- 外来で施行可能です。
■手術時間は?
- 手術施行時間は、ガーゼによる局所麻酔が 20 分程度、手術時間は両側で 10 分程度です。
■可能な年齢は?
- 我慢できるお子さんは、5 歳くらいから可能です。
■花粉症の方は施行する時期に注意
- 花粉飛散期 (2 月~4 月) のレーザー治療は、症状がさらに悪化する可能性があるため行っておりません。花粉飛散前にご相談ください。
- 花粉症がない方はいつの時期でも施行可能です。
■レーザー治療は予約制です
- 当院では、診察にてレーザー治療の適応があるかの判断を行った後、レーザー治療施行日を完全予約制で決めております。
■効果は?
- 効果の出方は重症度や個人差によりますが、約 75%の方に有効と言われています。
- 鼻閉に対する効果が最も期待できます。
- 効果が 2 年以上持続する方もあれば、効果がでない方もおられ(約 25%)、レーザーに対する粘膜の反応は個人差が大きいと言われています。
舌下免疫療法
アレルギーの原因物質のエキス(ダニ・すぎ)を少しずつ舌下より体内に入れて、徐々に増やすことにより、アレルギーの原因物質に慣れさせる治療法です。体質改善になるので、他の治療法と異なり、根治する可能性があります。(約 15%)
- 全員に効果が出るわけではありません(約 10%は無効)
- 薬の服用は、初回のみ院内で行い、2 回目以降は自宅で行っていただきます。
- 治療の継続期間は、3 ~5年以上の継続が推奨されています。(毎日薬を続ける必要があります)
- すぎ花粉症の場合、安全性の観点から、すぎ花粉飛散のない時期(6 月~11 月)に治療を開始することとされています。
■最新の報告で効果は?
- スギ花粉では、約 15%が完全寛解(症状がほとんど出なくなる)、約 65%が症状軽快、合わせて約 80%が症状軽減。
- ダニでは、スギ花粉と同様またはやや劣る、となっております。(2019年5月)
■舌下免疫療法Q&A
●対象は?
鼻アレルギー診療ガイドラインでは、軽症から重症まですべての方が対象となります。
特に次のような方にお勧めしています。
- 対症療法ではなく、体質改善をしたい。
- 症状を少しでも軽くしたい、薬を減らしたい。
- 薬があまり効かない、眠気など副作用がでる。
- 将来妊娠した場合に、薬が使えないのが心配。
- 勉強・スポーツ・仕事等に支障あり。
●治療の方法は?
薬を舌下(舌の裏)にいれ、1分間保持し、その後飲み込みます。1回目の投与は医療機関で行いますが、翌日からは自宅で毎日行います(1日1回)。
●通院は?
治療開始後の数回は、副作用がなく安全にできているかを、1~2週間目に確認します。その後は、1ヶ月に1回の受診となります。
●効果はすぐに出るか?
開始してすぐに効果が出る治療法ではありません。効果が出るまでに、最低数か月は必要で、開始後1年以上かけて効果が高まっていくと考えられています。
●副作用は?
アレルギーの原因となるものを口腔内に入れるため、アレルギー反応が起こる可能性があります(副反応)。最も多いのが、口腔内のかゆみ、違和感、腫れなどです。眼や耳のかゆみ。胃腸症状などもみられます。これらの症状は、治療開始後に多く、治療開始から1ヶ月以内に多く認めます。
●スギ花粉とダニの舌下免疫療法の併用は?
安全に行える例では、併用も可能です。併用療法を行う場合は、まず、片方のアレルゲンから開始し、安全性を確認してから、他方を追加します。
●インフルエンザ予防接種は受けて良いか?
インフルエンザなどのワクチンは作用機序が異なるため受けて構いません。
ただし、副作用が出た場合にどちらが原因か分からなくなるため、両者を数時間は空けて行うようにしてください。(午前と午後など)
●国内・海外旅行に行く場合は?
- 海外旅行の場合、副作用出現時に現地での対応に不安があれば、中断が望ましいと思われます。
- 維持期に入っている方は、1週間程度の旅行であれば旅行中は治療を中断し、旅行後に再開することが可能です。その場合、減量せず同じ量から再開可能です。(増量期の場合はご相談ください)
- 長期中断後に再開する場合は、一度減量して再開する必要がありますので、必ず受診をしてください。
副鼻腔炎
鼻がつまる、色がついた鼻水が出る、鼻が臭い、においがしない、頬や目の周りが痛い、などが主な症状です。
- レントゲンや CT で副鼻腔炎を起こした部位やその程度、またファイバー検査でポリープや腫瘍の有無を診断します。
- 長期間の治療に抵抗する場合、腫瘍が疑われる場合、好酸球性副鼻腔炎症例では、手術を検討します。
好酸球性副鼻腔炎
近年、難治性で、早期に嗅覚障害をおこし、再発を頻回におこす、好酸球性副鼻腔炎が増加しています。喘息の合併が多く、鼻腔・副鼻腔の粘膜に好酸球という炎症細胞が多数浸潤します。
鼻出血
鼻は血流が豊富な場所で、刺激により出血を起こすことがしばしばあります。多くは、鼻中隔の前方部の「キーゼルバッハ」と呼ばれる部位からの出血です。
アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎で鼻を強くかみすぎたり、いじりすぎたりして出血しやすくなっていることがあります。
- 内服薬(抗凝固剤など)、基礎疾患(高血圧、肝疾患など)のチェックを行います。
- 血液疾患(白血病、血小板減少症など)、鼻腔・副鼻腔腫瘍、鼻腔ポリープなどが原因のこともあります。
- 治療は、
1) 小鼻の部分を指でしっかりつまむ(5 分以上)
2) ガーゼによる圧迫止血、
3) 電気メスによる凝固止血など。 - 症例により、血液検査、ファイバー検査(出血部位の確認、腫瘍・ポリープなどの除外)、CT 等を行います。